この記事では、アカウントベースドマーケティング(ABMとも略される)という手法のご紹介と
実施のための手順について解説していきます。
アカウントベースドマーケティングとは
アカウントベースドマーケティングとは「自社にとって最も価値の高い顧客群(面)に焦点を当て、
その顧客群(面)に合わせた最適なアプローチを行うこと」です。
特に新しい考え方というわけではなく、従来からある基礎的なマーケティング概念なのですが、
これから東南アジアで営業活動を発展させていきたいと考える企業においては、非常に重要な概念です。
アカウントベースドマーケティングのイメージ
伝統的な営業スタイル
なぜ東南アジアで有効なのか?
結論としては、伝統的な営業スタイル(≒人海戦術営業)の限界が近いからと考えています。
円安、経済成長の低下が続く日本の状況とは対照的に、東南アジアでは経済成長や物価上昇に伴い、
現地スタッフの給料相場が年々増加しています。
さらに欧米企業なども続々と東南アジアに進出するなかで人材獲得の競争も激化しており、
優秀な営業マンだけでなく、一般的な営業マンも採用するハードルは高くなってきています。
仮にこのような状況下でなんとか営業マンを採用し伝統的な営業スタイルを実施していったとしても、
組織を拡大する際に再現性は低く、属人化をもたらします。
また東南アジアでは営業マンの離職率も比較的高いため、アカウントベースドマーケティングのような概念を自社の営業チームに積極的に取り入れていく必要があると感じます。
アカウントベースドマーケティングを行うための3ステップ
基本的にアカウントベースドマーケティングにおいてはターゲットの選別が肝になるのですが、
これができている企業が意外に少なかったり、できていたとしても戦略としてチームでの共有ができておらず、うまく運用できている企業は多くないと感じています。
従って、まず初めに必ず決めおくべきは顧客のセグメント基準です。
それぞれのステップを確認し、自社にとって価値のある顧客像を鮮明にしていきましょう。
※本記事でのアカウントベースドマーケティングは自社の顧客リスト(名刺や過去のデータ等)を利用してセグメントを行う前提で解説をしています。
ステップ1 : ポテンシャルと見込み度の条件の設定
ステップ1では、ポテンシャルと見込み度の2軸決め、自社にとって良い顧客条件を設定することから始めます。まずはポテンシャルの考え方についてですが、自社の顧客を思い浮かべてみてください。
相手の企業はどんな企業だったか?
企業内の担当者はどんな人であったか?
「受注率が高い顧客」「受注単価が高い顧客」「これから狙いたい顧客」などの観点で条件を整理していきます。
営業担当とマーケティング担当など役割分担がされているチームでは、それぞれの認識がずれないように、この条件を合わせることも大切です。
整理ができれば、それらの顧客群に対して、ABCDなどでランク分けをおすすめします。
たとえば、設定した顧客群をAとした場合、これだけだとどうしても母数が少なくなってしまいます。
そこで、Aから少し条件がずれた顧客群をBとし、さらにずれたものをC、Dと条件を緩めていくイメージでポテンシャルを決めていきます。
ポテンシャルランクの例
次に、見込み度の高さを設定していきます。自社の製品を検討しているユーザーが受注に至るまでにどんなプロセスを経ているかを思い浮かべてください。
例えば、「メルマガ登録 → 資料ダウンロード → Webサイトを数ページ閲覧 → 見積もり…」
というようなプロセスがあった場合、ユーザーがどのフェーズにいるのか?を把握することで、見込み度の条件設定が可能です。
この条件に対してもステータス1~5のように段階を分けていきます。
※ここでは既にマーケティングツールを活用していて、Webサイトを数ページ閲覧しているなどのユーザーのデジタル上の情報を持っていることが前提で解説をしています。
これらが不明の場合は「展示会来場 → 資料請求 → 見積もり → 商談…」など、自社に合わせて見込み度を組み合わせてみてください。
見込み度ステータスの例
こうして決めていったポテンシャルと見込み度のランクをマトリクスにし「A-3」といったように両軸のランクを設定することができます。
A1、A2とセグメントしたことで、自社のターゲット像が固めることができました。
A1よりはA2の方が受注率が高い可能性があるため、これらの顧客群のリスト作成をすることができれば、リストを営業に渡すことで効率よくアプローチを進めることができます。
それとは逆に、ポテンシャルの低い部分は自社のターゲット外ということになるので、ここは営業に渡さず切り捨てるようにすることも大事です。
或いはマーケティング担当者が主導になって、まだまだステータスが低い顧客群に対してはリスト育成を行い、ステータスをステップアップさせるような活動も重要になります。
ステップ2 : ターゲットにピンポイントでアプローチする
ステータスをアップさせるうえで、まずはポテンシャルが高い、AとBランクに対して継続的に接点を持っていくことが重要です。そこで営業マンは、このAやBに対してピンポイントでアプローチを行っていきましょう。
ピンポイントでのアプローチ方法についてはいろいろなやり方がありますが、メールマーケティングやテレマーケティングを使うと効率的かつスピードも速く実施できます。
ステップ3 : ターゲットのステータス把握
アカウントベースドマーケティングの効果を高めるためには、セグメントした顧客群へアプローチした結果、ステータスにどのような動きがあるのかを把握していくことが重要です。
ステップ3についてはどうやってステータスを把握するのかということですが、デジタルツールを活用することをおすすめします。
ツールとしては、マーケティングオートメーションと言われるマーケティングツールを利用するケースが多いです。
このツールには、まず企業の基本情報を入れていきます。加えて、その企業または個人がどれくらいサイトに訪れているか、どんなページを見ているかといった行動が自動的に入ってきます。さらに、営業マンの活動やフォームからの質問回答によって把握した情報を追加していくと、これらの情報をMAツールが一元管理してくれるのです。